マスコミが伝えないTPPの話 「非関税障壁の撤廃について」

@momopon2
【TPPで協議されるのは関税だけではない! ~その1:非関税障壁の撤廃について~】

《①非関税障壁って何?》 これまでお話してまいりまいたように、TPPでは参加国間における関税の撤廃が協議されます。そして、これと並行して、参加国間における「非関税障壁の解消」も協議されます。

「関税の撤廃」については、TVや新聞で間違った形ではありますが、一応、報道がなされています。ところが、「非関税障壁の解消」に関しては、ことTVについて言えば、ほとんどこれを採り上げておりません。

そこで、TVがほとんど伝えない「非関税障壁の解消」について、ここでざっくりとわかりやすくお話していきます。まず初めに、このあまり聞きなれない「非関税障壁とは何か?」からはじめましょう。

「非関税障壁」とは、国家全体の利益あるいは国内の産業やその従事者を保護するため、国が法律などを通じて、外国の参入を規制・制約することまたはそのシステムをいいます。文字通り、関税ではない壁で、国家そのもの、そして自国の企業や人を保護しようとするものです。

関税以外の壁での保護態様は多種多様。輸入に対して数量制限を課す。外国企業の参入そのものを禁じたり、参入に高いハードルを設けたり、参入にあたってめんどうな手続きを課したり。逆に国内産業に助成金を支出し、競争条件に差をつけるなど。他にもいろんなやり方があります。

具体例をいくつか挙げてみます。国家の利益そのものに関わるものとしては、通信・放送の事業免許など。あと、交通事故を減らすために設定される自動車の高い安全基準。産業に関するものとしては、牛肉や農産物の輸入数量制限など。

このように「非関税障壁」とは自国の利益を保護するために設けられるものなので、これをなくしてしまった場合は当然のことながら、それまで守られていた国自体・産業・個人の利益を毀損してしまうことが予想されます。

したがって、非関税障壁の解消にあたっては、国益はもちろん、自国の産業や人に対するダメージを十分考慮した上で決定する必要があります。

《②非関税障壁を撤廃していい場合と、いけない場合》 では非関税障壁を撤廃してもいい場合とは、いかなる場合をいうのでしょう? それは、概ね次の二つの条件のいずれかにあてはまる場合と考えます。

1:非関税障壁を撤廃しても国や企業や人が、既にこれに耐えうる状況にあること又は、近い将来、耐えうる状況をつくりだせる可能性が高いこと。2:撤廃することで一部企業等にはダメージが生じるが国民全体として得るものが大きいこと又は、撤廃することが国の存続に関わる場合

先に進みます。撤廃の判断基準の次は、個別のケースを用いて、具体的に検討していくことにします。

非関税障壁の撤廃の是非は、当然、相手国の要求内容によって答えが変わってきます。TPPで各国が要求すると予想される事項はあまりに膨大なので、ここでは大きく二つの例を挙げて、検討してみます。

(イ)チリやペルーなどによる労働市場開放要求 (ロ)最大の交渉相手国たるアメリカからの要求 

《③労働市場の開放要求》 TPP参加国のうち、外需依存が強く、非関税障壁を撤廃しなければ生きていけない国々があります。チリやペルーなどがその代表選手。これらの国々がしてくるだろう要求の中で、非常に大きな問題が労働市場の開放要求です。

労働市場の開放とは、低賃金の外国人労働者を受け入れやすくすること。具体的な措置の一つとして、就労ビザの取得要件の緩和が考えられます。

さて、この要求を受け入れ、低賃金の外国人労働者の流入を容易にすることが日本にとって良いことなのでしょうか? 前述の判断基準によりますと、答えはNOとなります。

理由を短くまとめて申しましょう。「低賃金の外国人労働者を大量に受け入れることは、今あるデフレをさらに加速させることになってしまう。よって国も企業も個人も、この要求に耐えうる状況にない(基準1)」からです。

結論とまとめの理由は以上のとおりです。これをさらに、企業・個人・国にあてはめて、「いかに要求に耐えうる状況にないか」を細かくお話してまいります。

まず企業について。確かに、低賃金の外国人労働者をたくさん雇えるようになることは、企業、ことに製造業にとっては、一見メリットがあるように思えます。容易に人件費を抑制できますものね。

でも、本当にメリットになるのでしょうか?低賃金労働者を雇えば、目先は利益をあげることができます。しかし、同業他社も負けじと賃金抑制をしていきますので、すぐに製品価格を下げなければ対抗できなくなり、結果、利益はどんどん薄くなっていきます。

企業は収益薄の安値競争から抜け出せなくなり、今あるデフレにさらに拍車がかかります。デフレ下の日本、攻めの経営のために必要な設備投資が下がり続けていますが、これも酷くなるばかりです。

こういうお話をしますと、必ず「優れた製品をつくれば、そのような状態に陥らないのでは?」というご意見がきます。しかし、考えてみてください。多くの企業がどこにも負けない製品を作れる訳ではないのです。国レベルの議論と個々の企業の議論を混同すべきではありません。

長期にわたるデフレ不況が続く今、国レベルの経済政策として必要なのは、「個々の企業がどうすれば成長できるのか?」以前に、「自国の企業が、深刻なデフレにこれ以上苦しまないためにはどうすべきか?」という視点なのです。

次に企業の従業員である日本人の雇用を考えてみます。詳しくいうまでもなく、マイナスにしかはたらきませんね。ここ10年ほどの労働環境の悪化はどなたでもご存知でしょう。ちなみに厚労省のデータによりますと日本人の平均年収はここ10年で100万円も下がったそうです。

最後に国についてみてみましょう。個人の所得低下は消費低迷に直結します。個人消費が減れば、それに支えられる企業の利益も減ります。そして、国の税収も減ることになります。大量の外国人労働者の受け入れは、デフレ下の日本にとっては害以外の何ものでもありません。

《④最大の交渉国であるアメリカの要求》 さて、日本にとって何かとかかわりの深いアメリカは、TPP協議でどんな要求をしてくるのでしょうか?

ここに米国政府から日本政府宛てにだされた規制改革要望書があります。http://bit.ly/aikGwm

通信、情報技術、医療機器、医薬品、流通、金融、郵政民営化・・・。他にもたくさんの項目で規制撤廃や緩和の要望が掲げられています。

もちろん、これらの要求が先に示した判断基準に照らし合わせて日本の利益になるとするならば、受け入れてもかまいません。しかしどうでしょう、日本の利益になるでしょうか? 私には、これらの受け入れが日本の不利益になっても、利益になることはないと思えてなりません。

誤解のないようにしないといけませんね。TPP協議でこれらの項目のうちどれが現実に要求されるのか、又は全部要求されてしまうのかは現段階ではわかりません。ただこのうち三つだけは、先日のTPP協議の前段階である協議で既に要求されました。http://bit.ly/fX82k3

ですので、ここからは、この三つにお話を絞って進めていきます。その三つとは ①郵政資金への米企業の運用参加 ②BSEがらみでおなじみ、月例20ヶ月の牛肉輸入制限の廃止 ③自動車安全基準を米国並みに引き下げること ・・・です。 

まずは②の「BSEがらみで設けられた月例20ヶ月の牛肉輸入制限の廃止」について。これはみなさまよくご存知でしょう。受け入れられるか否か、誰でも簡単に結論がだせます。

次に③の「自動車の安全基準を米国並みに引き下げること」。こちらも言うに及びません。

さあ問題は①の「郵政資金への米企業の運用参加」です。そう、あの「郵政民営化」。ご存知の方も多いでしょうが、郵政民営化はアメリカ様の要求なのです。しかし露骨ですね、郵政民営化とぼかすではなく、郵政資金への米企業の運用参加とは。

2005年、小泉首相(当時)は唐突に郵政民営化をもちだしてきました。郵政公社民営化法案は同年7月4日衆院本会議で可決。しかし8月7日の参院本会議では否決。参院で否決されたその日に小泉首相は「郵政民営化に賛成か反対か国民に聞いてみたい」言い衆院を解散、総選挙となりました。

この解散総選挙の前も選挙期間中も、マスメディアは唐突にでてきたこの郵政民営化問題を大々的に報道。内容はどれも「民営化賛成一色」。TVはニュース番組のみならず、ワイドショーでもこれを展開。郵政民営化賛成を煽りに煽っていたことをみなさま覚えておいででしょう。

街頭演説で小泉首相が「民営化反対派は抵抗勢力だ!」と叫ぶ様や、郵政民営化推進のもう一人の担い手である竹中平蔵さんが「民営化はこんなにすばらしいんだ」とすらすらぺらぺら喋る様が、連日放送されていましたね。

その影響でしょうか。郵政民営化に特に関心もなく、郵政民営化の真の目的も、郵政民営化ででるだろうデメリットもよくわからない多くの国民は、TVが映し出すイメージだけで、「民営化推進派=改革派」「反対派=守旧派・抵抗勢力」と思い込んでしまいました。

メディア総動員の郵政選挙。結果は与党自民党の圧勝となりました。ちなみに当時の民主党は、これだけ話題になった郵政民営化にはほとんど触れていませんでしたね。選挙の後、郵政公社民営化法案は可決され、現在に至ります。

さてその後、多くの国民は「郵政民営化の真の目的」を知ったでしょうか? それ以前に、あの時、郵政民営化推進論者が語ったことが正解だったか不正解だったか考え直したでしょうか? 2009年にかんぽの宿が問題になりましたが、それでもどちらも「否」なんでしょうね。

TPP協議で再び「アメリカから要求された」郵政民営化。その真の目的や、2005年の推進論者の根拠の妥当性を知らないままでいいわけがありません。そこで次回は「小泉郵政民営化とは何だったのか」「推進論者が語った民営化の根拠」についてまとめてみたいと思います。

閉店がらがら。ログアウト。



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by kijinyaa | 2011-01-30 21:04 | TPP


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